相続における不動産の評価について
相続手続きを行う際に、きっても切り離せないのが不動産の評価です。相続税の申告、不動産名義変更の登録免許税の計算、遺産分割においても不動産の評価を基準に他の財産の取得割合を決めることも多いので相続のあらゆる場面で不動産の評価を行う必要性が生じます。
今回はこの不動産評価についてのお話です。
さて、不動産の評価においては一物四価という言葉が存在し、文字通り同じ不動産に対してなんと4つの評価額があると言われています。
具体的には
- 時価(取引価格、実勢価格)
- 公示地価、基準地価
- 路線価額
- 固定資産評価額
の4つです。
それぞれの評価額には特徴があり、目的によってどの評価額を用いるべきかは異なってきますので以下、それぞれの評価額について説明していきます。
①時価(取引価格、実勢価格)
実際の取引を行った場合に想定される取引価格(相場)です。
主に不動産業者さんに依頼して査定を出してもらうことで調べることができます。
実際に相続不動産を売却する際などに使用するときに役立ちます。
国土交通省の土地総合情報システムで近隣エリアの取引相場を確認することが可能です。
http://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
②公示地価、基準地価
国または都道府県が公表している価格です。市場取引を参考に公的指標として公表されています。ただし、いずれの場所においても公表されているわけではなく、一定範囲の定点においての価格が公表されているだけですので、近隣の不動産が必ず同じ価格とは限りませんし、個別の状況(接道による評価減や高低さなどの立地条件)は考慮されません。
地域全体の不動産の価格感を知りたい場合には適していると思われます。
資産評価システム研究センターの全国地価マップにおいて公示価格その他を確認することが可能です。
http://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216
③路線価額
国税庁で公表されている路線価図を用いて算出する評価額です。
主に相続税の計算における不動産の評価方法として用いられます。
時価、公示地価に比べておよそ8割程度と言われています。
国税庁HPの路線価図で確認することができます。
④固定資産評価額
市町村で定めている固定資産税を算出するための基準となる評価額です。
固定資産税の算出に用いるほか、不動産の名義変更の際の登録免許税の計算にも用います。
地価、公示地価に比べておよそ7割程度と言われています。
所有者(納税代表者)へ毎年5月~6月頃に送られてくる固定資産税納税通知書(課税明細書)で確認できるほか、所有者もしくは所有者が亡くなっている場合には相続人であれば不動産を管轄する市町村役場にて発行される固定資産評価証明書や課税台帳(名寄せ帳)にて確認できます。
以上のように大きく分けて4つの評価方法に分けられる不動産ですが、遺産分割協議においてはどの評価を基準に話し合いをすべきかという点については法律では定められておりません。
それぞれの評価額の特徴を理解して、どの評価額を基準に遺産分割の話し合いを進めるかも含めて相続人全員の合意・納得が必要と言えるでしょう。
(執筆担当:神戸光邦)