遺産分割協議について
遺産分割協議とは、被相続人の遺した財産(遺産)を、相続人の間でどのように分配するのかを決めるための協議のことを指します。また、協議の結果まとまった内容を書面にしたものを「遺産分割協議書」といいます。
遺産分割協議を行う上での注意点
1.全ての相続人が参加した協議であること
全員で話し合って決めましょう、というわけではありません。最終的に全員が合意すれば良いのです。誰か一人でも合意しなければ、その遺産分割協議は不成立となりますが、全員が合意しているなら話し合う必要はなく、合意内容の書かれた協議書への署名押印を郵送でやり取りするだけでも構いません。
2.相続人の中に未成年者がいる場合
もし相続人の中に未成年者がいる場合、特別代理人の選任申立が必要となる場合があります。本来、未成年者はその親権者が代理人となりますが、遺産分割協議では、親権者も相続人の一人として参加する場合があるため、親権者の利益と子供の利益が真正面からぶつかることになります。そこで、もし親権者が未成年の子供を代理した場合、自分の有利な方向に協議を進める怖れがあります。このような場合、親権者は未成年の子供を代理することができないため、特別代理人の選任申立を行う必要があります。
3.相続人の中に胎児がいる場合
胎児が相続権を有するかについて法律では、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす(民法886条第1項)」と定められています。つまり、お腹の中にいる胎児は相続人の一人として数えられます。しかし、この生まれる前の胎児のために特別代理人を選任して遺産分割協議を行うことはできません。これは、胎児は出生することにより確定的に相続人となること、逆に言えば、生きて生まれることができなかった場合、相続人とはみなされないからです。遺産分割協議は相続人が全員参加したものでなければ無効となるため、相続人の中に胎児がいる場合は、その出生を待ってから遺産分割協議を行うのが望ましいといえます。
遺産分割協議書の作成上の注意点
1.「何を」、「誰が」、「どれだけ取得する」のかを明確に記載しましょう。
【例】
第○条 下記の預貯金は、相続人Aが、取得する。
第○条 下記の預貯金は、相続人Aと相続人Bが、各2分の1の割合で取得する。
2.協議書に相続財産の記載漏れがあっても対応できる文言を記載しましょう。
【例】
第○条 本協議書に記載のない財産、又は本協議後に発見された財産については、相続人Aが取得する。
3.不動産を記載するときは登記事項証明書の通り記載しましょう。
【例】
第○条 下記の不動産は、相続人Aが、取得する。
- 所在 ○○市△△町
- 地番 □□番××
- 地目 宅地
- 地積 111.11㎡
また、私道が抜けていないか、権利証等で確認しましょう。協議の結果、土地と建物は相続人Aさんが単独で所有することになったが、家の前の私道は協議し忘れて、相続人全員の共有になった、ということにならないよう、予めよく確認しておきましょう。
4.預貯金は金融機関、科目、口座番号など細かく記載しましょう。
【例】
下記の預貯金は、相続人Aが、取得する。
株式会社ゆうちょ銀行 にて有する次の口座を含むすべての権利
通常貯金 記号番号:10000-1-00000001
5.住所は印鑑証明書に記載のある通り、番地や号を省略せず、氏名も含め正確に記載しましょう。協議書には実印を押し、印鑑証明書を添付することが望まれます。
【例】
住所 ○○県△△市大字□□一丁目1番1号
氏名 司法 太郎 実印
後々の紛争を予防するためにも、遺産分割協議書を作成する際には、上記の注意点をよく確認しましょう。また、不安や疑問がる場合には、作成の前に最寄りの司法書士に相談されることをお勧めします。