自筆証書遺言に関する改正②法務局保管制度
本文を手書きして作成する自筆証書遺言は、手軽に作成することができ、遺言者の自宅で保管されていることがほとんどでしたので、いつの間にか紛失してしまったり、あるいは相続人によって遺言書を廃棄(捨てる)、隠匿(隠す)、改ざん(書き換える)されるおそれがあり、その結果、相続をめぐる紛争が生じてしまうリスクがありました。
このような問題点を解消するため、令和2年7月10日より、自筆証書遺言書を法務局で保管してもらえる制度(以下、「法務局保管制度」という。)が開始されました。法務局で保管することで、紛失・廃棄・隠匿・改ざんが防止できるのはもちろんのこと、相続人が、相続発生後に法務局で遺言書が保管されているかどうかを検索することも可能となっておりますので、遺言内容が、より実現し易くなったのではないかと思います。
さらに大きな変更点として、遺言者が亡くなった後、これまでは家庭裁判所に対して、検認(遺言書の存在を明確にし、後日の偽造・変造を防ぐために、家庭裁判所において確認するもの)の申立てを行い、検認の期日を経て、その遺言書に基づいて手続を進める必要があったため、遺言者が亡くなってから、遺言書に基づいて不動産の名義変更や預貯金解約などの相続手続を開始するまで、数ヶ月の時間がかかっていました。この点、新しく始まりました法務局保管制度を利用した場合、法務局への遺言書情報証明書の交付請求は必要になりますが、家庭裁判所への検認手続が不要となっておりますので、相続手続を簡略化して行うことができるようになりました。
コスト面については、法務局で保管申請に支払う手数料は3,900円となっており、公証役場で作成する公正証書遺言は、一般的に5万円~10万円程度(遺言書の内容と記載する財産の額等によって異なります)でありますので、法務局保管制度がとても利用し易い制度であることが分かると思います。
注意していただきたい点として、公正証書で作成をすれば、遺言書の内容につき、公証人のチェックを事実上受けることになりますので、内容が無効であるということは原則ありません。法務局保管制度を利用した自筆証書遺言では、法務局で保管されたのだから遺言書に不備はないと思う方もいるかもしれませんが、法務局では遺言書の有効性を判断して保管をしていないので、せっかく法務局保管制度を利用しても、遺言書を使用するときに、内容に不備があり相続手続きに使えないという状況も起こり得ます。
そうならないために、まずは法的に不備のない遺言書を作成することが最も大切なポイントといえます。私たちパートナーズ司法書士法人では、遺言書の作成から法務局保管申請に至るまで、法律専門家がサポートしますので安心してご相談いただけます。遺言書を作成しようか悩んでいるという方もご相談いただけますので、お気軽にご連絡ください。